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六月の開発局

「業界の人」じゃないよ

弱小サークルの製造戦略 コミックマーケット90反省

おことわり

世間は夏休みもしくは盆休みらしく、ガラガラの朝の電車の中でこれを書いている。殴り書きなのでわかりづらくても勘弁してほしい。

コミックマーケット88とその後

前回のコミケは落ちたが、前々回コミックマーケット88には受かっていた。ので、艦これの瑞鶴に適当な服を着せたイラスト集を頒布した。

全ページカラーという大変豪勢な仕様にした結果製造原価が300円になり、これを400円で14部頒布したため、粗利が1400円で、売り子に昼飯をご馳走して消えた。

が、とても楽しかった。400円という大金で僕の本を手に入れたいと思ってくれる人がそれなりにいるのである。瑞鶴に好き勝手な服を着せるというむちゃくちゃなコンセプトに理解者がいるのである。もちろん義理で来てくれた人もいたが、知らない人の方が多かった。当然、瑞鶴という大変可愛い艦娘の魅力あってこその成績だが、それでも嬉しい。清々しい気持ちで撤収できた。

当然次も出ることに決め、それからは創作少年で行くことに決めた。僕が長年作っている作品を出していきたいと思ったからである。磯風とか描きたいけど、そっちが優先である。というわけで創作少年、3日目である。

仕様の策定

前回の反省を踏まえ、表紙のみカラー本文モノクロとすることにした。カラーは時間がかかる上に、描きたい水準に仕上げることが僕の技倆では難しく、むしろモノクロでも読み応えあるものを提供したほうが良いと考えたからだ。

頒布対価は700円と設定した。これは20部頒布すればスペース代をほぼ回収できるものである。他にもものすごいコストはかかっているし、よりよいものを頒布する元手を考えたりすると全然足りないのだが、上を見過ぎてもしょうがないので700円とした。1000円にするかかなり迷ったが、700円として手に取ってもらいやすくすることにした。

前回はイラストだけだが、イラストは僕の持っている技術の中でも音楽の次にレベルが低いので、文章を主体に構成した。文章の技術は比較的高く、先日もそれが証明されたのでこの判断は正しかった。

内容は「THE NAME OF THE HEROINE」という物語の良さ、僕の企画の論理性つまり「素性の良さ」「展開できそうな感じ」や、緻密さ、そして想いを伝え、読んだ人に「この作品が見たい」「金や労働力を差し出そう」と思ってもらえることを目的とした。

制作

内容の主となる文章は電車の中でコツコツ書き溜めていたが、小説も入れようと思って2万字強書いた。こちらも電車の中で書いた。小説はウェブに全文掲載すると、同人誌が捌けるという話を聞いたのでその通りにした。わけがわからなかったがそういうものらしい。おまけのお話もつけておいた。

苦手だが、イラストもできるだけ頑張った。いろいなトラブルが重なり、最終的な原稿においてその成果が発揮できた部分は少なくなかったが、それでもやれることはやった。足りないイラストは前に描いたラフなどを引っ張ってきた。コミケ89用にラフを描いておいてよかったと思う。

特に表紙の美波はものすごく頑張った。特にスカートは凝った。スカートの下にホットパンツをはいていたり、ブラウスの下に透け対策でキャミソールを着ていたりとか大事だと思っている。当然一番気に入っているキャラクタだし、そういう細部がキャラクタに現実味を与えより可愛らしくしてくれると思う。本当はブラウスや髪をもっと描き込んでやりたかったし、なにより崩れ切ったデッサンをなんとかしたかったのだが、できるだけのことはやってやったと思う。

もっとも凝ったのはページの順序や組版といった外形のフォーマットである。InDesignを一ヶ月だけサブスクリプションして作業した。これについては自信がある。すごくかっこいいものができたと思う。

例えば、最初の企画の経緯、の次に何の説明もなしにキャラ紹介が連続している。なぜならば、ド真ん中のページに詩とイラストを入れたかったからである。これで前半と後半を切り分けたかったのだが、キャラ紹介がページ数が多いので、こういう順序でないとキャラ紹介が途中で分断されてしまうから、こうなった。

詩もものすごく凝った。全フレーズ7文字という「雪の進軍」仕様で(やめろ!歌うんじゃない!)、韻を踏んだり同じ単語をできるだけ使わないようにしたりと大変だった。この詩はエンディング用に使うつもりである。というか主題歌クラスである。まあ最終的には得意とする人に修正してもらうことになるだろうが、大変良いものができたと自負している。

フォントは本文を游明朝体ミディアムの11歯、見出しはヒラギノ明朝を基本とした。数ページを除いて段の最終行まで文字を詰めた。さらに、A3で小冊子印刷をして、最後にドーラのカッタでA4変形版にした。

一方で校正基準や禁則などはあまり詰め切れなかったし、徹夜で作業になってしまい製本中に数多くのミスを発見してとてもつらい。小石川高校の存在を忘れていて、茗荷谷への変更を決意したりとか些細なトラブルも多かった。

が、全体としてすごくいいものになったと思う。もっと内容を充実させたかったが、まあしかたない。というか、よく見たら「THE NAME OF THE HEROINE」の文字がなんと表紙に小さくしか入っていなかった。完全に内容については失策である。

宣伝および頒布

宣伝戦略は実に周到だった。八月に入ったら小説の公開を始め、告知画像をアップしたりツイートしたりして知名度を上げようと努力した。

その結果がこれである。大変な広告力を確認できると思う。思わず涙を流す水準である。

生産数についてだが、前回参考にしていたウェブカタログでのお気に入り登録数は今回全く役に立たなかった。前回登録してくれた方々がまったく外さないでいてくれたためである。したがって「今回はこのサークル瑞鶴じゃないけど、この次は瑞鶴かもしれないからとりあえずお気に入りに入れておこう」みたいな感じと思われる。

ので、Twitterでアンケートを実行し、最も伸びた10部を採用しかけたが、悪い予感がして12部にした。前回の反省を踏まえて、近所のセブンイレブンですべて印刷した。大変高品質に仕上がり満足である。

会場に到着してから慌てて紙を折って製本した。すべてが製本し終わったのはなんと会場と同時だった。まあ、そのあと気づいて裁断したのだけれど。

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スペースはこんな感じだった。ポスタフレームは家で冴えない彼女の育て方の絵を飾る仕事しているものを引っぺがして持ってきた。スタンドがなかったのが痛恨の極みである。素晴らしいクロスは友人が貸してくれたものである。表紙と絶妙に調和していて、大変よかった。シン・ゴジラで語られたように、持つべきは友人である。

成績と評価

さて、気になる成績だが、まず準備会が一部召し上げていった。当たり前である。会社の上司が夫婦でいらしてくださったのと、後輩がきてくれたのでこれは計算に入れない。またてめえの分と、同僚二人の分も除外する。上司の奥様が、内容を見て初めて巨大不明生物を見たような声をあげていたのが印象的であった。多分、あまりの絵の下手さに驚いたのだろう。

で、残りは誰だかわからない人が手に入れてくださった。

5冊捌けたのである。皆狙い撃ちで手に入れてくれたものと思われる。もちろん、その場で目に留まって手に入れてくれるというのも嬉しいが、5人もの人が僕のよくわからない本のためにスペースまで来てくれて、対価を支払い持って行ってくれてとても嬉しい。宣伝効果があったとみていいだろう。

ふりかえり

今回最も良かった点はここには書かなかったが様々なトラブルや突発事故が重なり、大変計画が破壊されたが、徹夜という回復手段を使うことでなんとか仕上げられたことだ。

情報量と時間を最後天秤にかけ、誌面のレイアウトを確定した時点で、入れるものがなくなれば謎の空白ができることを甘受しなければならなかったが、常に最適な手を打ち続け、最悪の事態を回避した。うまくやったと言って良い。

もちろん、当然徹夜を計画に入れて生産を行うべきではない。工業における安定稼働とは緊急時の余力をもった上で掲げられるべきものであり、僕は継続的に作品を作り続けたい。だから、これは極めて異常な対応として同じ事故を発生させないよう認知、予防、対策を徹底しなければならないと評価できる。

くわえて、仮に同規模の事故が発生した場合もより良い回復もしくは減退計画に移行できるような事前のより高度な計画が求められていると言えるだろう。

今後について

捌ける同人誌と捌けない同人誌の違い、特にイラストを主体とする本において重要なのは上手いか下手かである。

もちろん文章を主体としているわけだが、映像作品のための文章であり、映像の多くは絵が占めるわけであるから、イラスト本と捉えて今後について考えたほうがいいだろう。

率直に言って、僕の絵が下手だから5部しか出なかったのだ。オリジナルで絵が10枚程度しか載っていなくても、上手いやつは部数が出る。

部数が出る、ということは、金が手に入って次の作品を作りやすくなるだけではない。より多くの人に見たいと思ってもらえるという期待、作品の価値や自らの総合的な力を極めて高い水準で数値化して観測できるということだ。創作者にとってはこれも大きな価値がある。

僕も上手くなれば、もっと部数が出て、つまり見たいという気持ちを多く受け取れるようになるだろう。これに10億円の価値があれば、僕は大作の怪獣映画を撮れるのだ。だから、一歩ずつやっていく。その速度は上げたいが。

したがって、もっと上手くなる予定だ。これは夢でも希望でもない。予定である。さらに技術を高め、より良い生産計画を立て、適切に設備投資を行い、余力をもって事にあたり、事故に適正に対処する。ただそれだけの話だ。僕はそういう世界で長く生きているし、それで生計を立てているので、やれるだろう。

ただ、一方で、僕の本の魅力は「5」なのかということにやはり悩む。これが「5」で5冊出て行ったのなら、大変喜ばしいことだ。だが、「7」なのに5冊しか出て行かなかったのなら悲しい。しっかりと宣伝もしていきたいと思う。

さて、次にむけて頑張ろう。