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六月の開発局

「業界の人」じゃないよ

明石二種第一学校蹴球戦記について

f:id:TOYOZUMIKouichi:20170416235202p:plain 先日の告知通り、4月9日水曜日から明石二種第一学校蹴球戦記の連載をはじめた。毎週水曜に一話ずつ、全13話である。既に書き終えているので、多分完結する。細かい字句の修正を行ったりしているから、まだ全部投稿予約はしていない。

若干ネタバレしつつ、仕掛けについて書いておきたい。そもそもこのお話は、僕が妄想しているアニメシリーズ、THE NAME OF THE HEROINE 全26話の前半部分である。これは26話のうち25話の流れを既に組んであるのだけれど(1話欠けている理由は後述)、何しろアニメ向けに考えた話なので絵を妄想して考えている。こんなもの、そのまま文章にしてもなにがおもしろいんだかさっぱりわからない。だから、小説にするにあたって小説ならではの視点を入れたりしている。

例えば、昨夏発行の同人誌「ScoutReport 1」には1話のシナリオを掲載した。これを読むとわかるが、1話のAパートは主人公島津裕也の卒業までを、Bパートは入学から着任までを描いている。ところが、小説ではAパートが卒業までなのは同じだが、どちらかというと描かれているのはヒロインの一人椛沢優理絵である。そしてBパートは部長兼キャプテン朝長響子の視点で彼女のこれまでの経歴を描いた。朝長は今までほとんど描かなかったが、最初のシーズンで終わる小説では最初のシーズンにしか基本的に登場しない朝長を大きく描いた方が小説として良いのではないかと思ったからだ。

おもしろい作品を作る、としたが、今までの僕の作品にはないおもしろさだと考えている。「Pathfinder」では、「気づくこと」のおもしろさを狙った。「爆撃」は即物的なおもしろさだ。そして「失われたフィルムを求めて」では、伏線が敷かれてそれが回収されて、なるほどとわかるオチが用意されるおもしろさを作った。「シリウスの七日間」は映像の衝撃のおもしろさだ。この作品のおもしろさは「ノンフィクションを読むような、タネも仕掛もない、ただ進んでいくことのおもしろさ」を作ろうとしている。

THE NAME OF THE HEROINEという作品は、その題の通り「ヒロインの名前」についての物語だ。すべて見終わった時に、なるほど、だからTHE NAME OF THE HEROINEというタイトルなのか、とわかるようにしてある。まあ、もっと早く気づく人もいるだろうし、全然気づかない人もいるだろうけど。そして、この小説は明石二種第一学校蹴球戦記なので、戦記、つまり戦いの記録として基本的には書いてある、というわけだ。

全13話のうち、第4話はほとんど最後に書いた。これは、全26話の流れを作るときに第4話ともう1話だけかなり緩くしていたからである。なぜそうしたかというと、実際にハコや脚本を実装すると敷くべき伏線や描くべき出来事が出てきて全体の構成がパンクするのでそれを吸収するための措置だ。

こうしてできた全13話の流れを記す。なお、内容に触れる。ネタもへったくれもないが、全部読むのはめんどうくさい、という人は、以下のリストから興味のある回を待って読んでもらい、気に入ったら他の回も読んでほしい。

第1話「イスタンブールを忘れるな」ではまず、主人公島津裕也の境遇と、その幼馴染椛沢優理絵の関係、その愛を描いた。それから、朝長響子を通じて、明石二種第一学校女子蹴球部の現状を示した。この回は説明回である。副題は、本来の第1話の英題「Remember Istanbul」からきている。この英題はその話を別の言葉で表してすべての回につける予定だ。原題は既報の通り「わたしと、君のために」。

第2話「野良犬の日」では、コーチとして起用された岩崎高成と島津裕也の視点から、彼らの仕事に対する姿勢やチームづくりの方針を描いた。別にフットボールのディテールを語る物語ではないが、最低限抑えるべきものというのがあると思うからだ。原題は既報の通り「準備する人生」。

第3話「ブリタニア作戦」はチームが抱えてしまった新たな問題を描きながら、この現実感の乏しい作品に説得力を与えるために用意されている。また、僕はほとんどフットボールを主題にした作品を見たことがないのだが(銀河へキックオフ!とシュート!それから栄光への脱出程度であるし、ほとんど内容を覚えていない)、なるほど、そうきたか、と思ってもらえるものを目指した。サブタイトルで検索すると本当にネタバレである。原題は既報の通り「大物見参」。

第4話「さまざまな理由」は前述の通り吸収のために用意しており、書くうちに目立ってきた名寄由紀恵ともう一人の人物について描きつつ、第5話前半を前倒して構成した。この作品の舞台設定を描いていく回、と今は捉えているが、変化するかもしれない。まだ温かいので自分がどんなものを描いたのか見極め難いのだ。原題は既報の通り「勝利の理由、敗北の原因」。

第5話「境界線を超えて」は物語が動く回である。つまり、主要な登場人物達にとって価値観を揺れ動かされるできごとが起きる回だ。ストーリィとしても彼らの目指す、彼女達の描き出すフットボールを伝えるために表現も工夫した。ドラマもあるので盛り上げ回である。原題は既報の通り「価値ある友情」。

第6話「第四種接近遭遇」はチームの抱えていた二つの問題に対する取り組みを描いた文化祭の回である。フットボールから離れて、登場人物達を描くことに集中した。前話でフットボールを描いたので、バランスを取る措置でもある。一般的に、多分一番ウケる回だと捉えている。原題は既報の通り「ファミリィ」。

第7話「音のない時間の中で」は修学旅行を通じて椛沢優理絵と、メインヒロイン白瀬美波の心象を描いた回だ。この回は幻想的な魅力をもたせたいと思っていて、絵がかなり浮かんでいたのでその言葉にならないものを新しく言葉になるもので書き出すことに苦労した。前話とはうってかわって大変評価が不安になる回でもある。なお全13話の中で白瀬美波の視点で描かれるのはこの回だけである。原題は既報の通り「身の丈知らず」。

第8話「戦術である少女」は主人公達に新たに降りかかる問題とそれへの対応を通じて島津と彼を取り巻く人々の人物像を描いた。登場人物には一言で表せない色々な立場や感情をもたせたい。主人公なのだから特に丁寧に描いていきたい。簡単に言えばこのお話もまた突拍子もない状況を通じて人生の転換点を描くものだからだ。原題は既報の通り「選手以上の存在」。

第9話「17歳の冬」は彼らの関係のささやかな変化をまた彼ら自身の境遇を織り交ぜて描いた。境遇のような話は少しずつ、少しずつ描いて見ている人に浸透させていかないとなかなか理解されないと考えている。まあ、純粋に男女の惚れた腫れたの話だ。原題は既報の通り「そして、恋が始まる」。

第10話「番号が示すもの」からは終盤に向けて物語を動かし始める。そして、新入生二階堂晴海が登場すると同時に彼女の視点から最強の敵、茗荷谷女学院第一学校蹴球部を描く。原題は既報の通り「恐るべきメルカート」。

第11話「戦犯」は主人公島津裕也の変化を描く回だ。状況が進展すれば人は変わっていくと思うので、ここでしっかり描いた。それから、彼ら彼女らが大切にしているものを改めて描く。原題は既報の通り「あなたがいたから」。

第12話「春の誓い」は最終話に向けての整理と準備の回である。きちんと整理して、最後の戦いを迎える期待感を作ることを目指した。原題は既報の通り「禁じられた納得」。

第13話「勝利至上のフットボール」は最終話なので徹底的に試合である。やるべきことをやることを心がけた。原題は既報の通り「アンチ・フットボール」。

なお、全26話でしか必要のない一部の描写は省いたし、既発表の登場人物の名前等も修正している。設定も変わっている。これからも変わるだろう。描くと、描いたことによって気づくこともあってなかなかおもしろい。今も「ああ、もっとこうした方がいいな」とか気づいている。

だが、このまま出してみる。やはり、一つ完成した作品を出してみる、ということも大きな妄想には必要なことだと思うからだ。THE NAME OF THE HEROINEが持っている物語の欠片と、ストーリィの一部分、そしてドラマの影がこの作品にはある。映像とは違い、あまり技術はないから、読みづらいかもしれない。が、魅力ある作品だと思ってもらえるように誠意を込めた。

是非、読んだり、紹介したり、感想を書いて欲しいと思っている。よろしくお願いします。