六月の開発局

「業界の人」じゃないよ

ガールズ&パンツァー最終章第一話について

僕は8年前に映画を撮ったとき「演出とは時間の使い方」と定義してことに臨んだ。庵野秀明総監督が細かな動きの時期にこだわって作品を作り出しているところを去年確認し、今年もこういう作品に出会えて、あの時の判断は間違っていなかったな、と思える。49分の上映時間はとても長く感じられて、それは非常に豊かで楽しい時間だった。

劇場版で素晴らしいものを見せてくれた作画は今回も健在で「総天然色漫画映画」として本当に楽しかった。小さな動きの質がとても高く、じっくり何度も眺めたいと思ったものだ。不穏な話も漏れ伝え聞いているが、なんとか大勢の納得できる形に収まって欲しいと思うばかりだ。

それから、音響は相変わらず素晴らしく、ここ数年のアニメ作品の中では並ぶものがいない出来である(歴史を振り返ったら08年にスカイ・クロラというのがあったのを思い出した)。ただ音が大きいのは映画館なら当たり前のことで、どんな音が鳴っているのかその音色の豊穣さや滑らかさを映画館では楽しみたい。本音を申し上げると、シン・ゴジラに最優秀録音賞を与え、ガルパンに優秀録音賞すら与えない日本アカデミー賞はこの点を問われるべきだ、もっと率直に言えば国内最高峰の映画賞の有り様として誹りを免れないと思っている。

さて、ガルパンは女の子と戦車という大帝の男の子が大好きなキャラがメインのアニメである。このキャラがいかに活躍するかが大事なわけだ。だから、他のことをいかに端折るかという話になる。劇場版のストーリィもだいぶ雑だったが、今回は雑さに磨きがかかり、開き直って「じゃ、こういうわけで戦車するから」という具合である。潔くて大変よろしい。

さて、ガルパンでも内面の物語つまりドラマを楽しめるのではないか。という話を以前書いた。俺がまほケイダジが好きなのでまほに対する感情移入でばかり書かれているから要約してここに書くと、要は「西住みほという自己犠牲の精神しか持てず、優秀な野戦指揮官にはなり得るが決して指揮に徹することのできない妹が結局どうにもならなかった」にも関わらず「当人も周囲も概ね幸せになれた」のだからよかった、ドラマとして「読んだら楽しいよね」みたいな話である。

テレビシリーズ、劇場版と通じて西住みほの「社会」における成長と、「戦場」における限界が描かれたのである(そういう見方をすれば)。で、蓋を開けたら最終章は、河嶋桃という大洗女子学園において最初に登場したみほの苦手としていた「社会」の化身を隊長としてを置いて、その現場指揮を見守る、つまり「社会」における成長したみほが「戦場」における限界に達したみほを通じて誰かを育てる、社会と戦場の融合が発生したのだ。なるほどそう来たか、と思ってとても期待している。

押井守監督はヒーローの物語とはヒーローが何かを為すことで自身をが変えることだと言っており(世界の半分を怒らせる。第14号を参照のこと)、西住みほは確かに大洗女子学園やその生徒たちを救うことで自らが救われたのだ。そして今、再び誰かを救うことで自信を、さらなる成長を見せようとしているのでは、ないか、そう思うのである。そしてもし、彼女が「自己犠牲の精神」以外の何かでダージリンを打ち倒すことができれば、これは大変素晴らしいことなのではないのだろうか。

ともかく、はじめ方として本当によく出来ていると思ったし、こうしてもう一度内面のお話、ドラマを作り出し、目的のために洗練された外面のお話ストーリィを持っているのだから、しっかりと6話でTV版第一話から始まった「大洗女子学園に生きる戦車道チームの物語」を不可逆かつ継続不可能な形で終わらせてほしい、完成させてくれたら本当に嬉しいし、今後の流れに関わらず作品として期待している。

さて、大波のフリント嬢を演じられた米澤円さんは大変お歌のお上手な方で、彼女の1stアルバムに収録されている「ハートフル・ドリーマー」という曲は彼女の声の良さを存分に引き出した大変良いお歌なのだが、あまり知られていないので書いておきたい。iTunesでも配信されていて試聴できる。それから、彼女の実質的な1stアルバムであるWHITE ALBUM2 ORIGINAL SOUNDTRACK~setsuna~は廃盤になってプレミア価格になってしまって、配信だと「深愛」が聞けないそうなのだが、とにかく良いアルバムなのでオススメである。くわえて、津田朱里さんとデュエットした「White Love」が存在するのだが、これはディスクにしか収録されていない。しかし、これも大変良いのでオススメである。

1stアルバム発売以後、僕の知る限り彼女の歌うたいの活動というのはあまり目立ったものがないのだが、是非これで人気が出て二枚目の個人のアルバムが出てほしいなと思っているのである。